Introduction

DhaibaWorksとは?

「DhaibaWorks(ダイバワークスと読みます)」は,国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下,産総研とよびます)において開発された,人体シミュレーションのためのプラットフォームとなるソフトウェアです.2012年より現在にいたるまで開発が続けられています.もともと産総研では,「Dhaiba(「ダイバ」と読みます)」とよばれる,人体の三次元機能モデルの開発がおこなわれていました.DhaibaWorksは,このDhaibaモデルを可視化・制御する機能に加え,さまざまな製品や環境モデルをインポートしたり,さらにはこれらのモデルの統合的なシミュレーション機能を実現したりすることで,持ちやすさ・使いやすさといった,人間工学的な評価を用いた製品設計,いわゆる「人間中心設計」をおこなうための支援ツールとしての役割を担っています.2012年のDhaibaWorks 2012を皮切りに、4度のアップグレードを経て、最新バージョンであるDhaibaWorks V2がリリースされています。

何ができるのか?

DhaibaWorksには,このソフトウェアの開発が始まった当初より,人体シミュレーションによる人間中心設計の支援ツールという大きな位置づけがあり,その実現のためには大きく分けて3種類の機能を実現していく必要がありました.

 

  • さまざまな体型・寸法・機能をもつ人体モデルを柔軟に構築できること

  • さまざまな製品に対し,使用時の人体の姿勢や運動を推定・再現できること

  • 生成された人体の姿勢や運動から,人間工学(エルゴノミクス)にもとづいた定量評価を行い,製品の再設計を支援すること


これらの機能を実現する方法はどれも一つではありません.例えば,人体モデルを構築するには,身長や体重などの代表的な寸法項目を入力として,統計的に代表となる人体モデルを構築する方法もあれば,ある個人の体表に貼り付けた多数の光学式マーカセットの各位置を,モーションキャプチャシステムを用いて計測した結果から,特定の個人に対する人体モデルを構築する方法もあります.どの方法もオールマイティというわけではなく,設計する製品や評価項目,設計方法,評価にかけられるコストなどによって,取捨選択されていきます.

DhaibaWorksでは,これらの少しでも多くの可能性に対応することができるよう,現在でも上述の機能を実現するさまざまな手法の構築に取り組んでいます.

開発コンセプト

一方で,このようなソフトウェアを開発するからには,やはりできるだけ多くのシーンで活用していただきたいという願いもあります.そこで,DhaibaWorksの開発コンセプトとして,以下の3点を重視することとしました.

 

  • さまざまな人体モデル・製品モデルに対応すること
    このため,要素技術やデータ構造は可能な限り汎用的なものとすること.

  • 設計業務の中でシームレスに使用可能であること
    このため,柔軟なバッチ処理機能をもつこと,CADシステムやFEM(有限要素法)ソルバ,数値解析ソフトウェアなどの,さまざまなソフトウェアと連携できること.モーションキャプチャシステムや,接触力・トルク計測装置などの,さまざまなハードウェアと接続し,データを取得・可視化・解析することができること

  • 国内外のデジタルヒューマン技術のハブとなること
    このため,ソフトウェア開発キット(SDK)を公開し,プラグインやスクリプトなどをユーザが独自に開発することによって機能を自由に拡張できること,本ソフトウェアに関するコンソーシアムを運営し,広く意見を求めること

 

DhaibaWorksのシステム構成

DhaibaWorksのシステムの特徴的な点として,パッケージシステムがあります.DhaibaWorksの最小構成には,人体モデルも,姿勢生成に必要なインタフェースも含まれていません.前述の3種類の機能のように,実現すべき機能・インタフェース・データ群は,それらの種類にもとづいて,拡張パッケージとよばれるいくつかのグループに分けられます.これらの拡張パッケージは,DhaibaWorksが起動した際に,ユーザの所有するライセンス等に応じて,動的にロードされるという仕組みになっています.こうすることで,例えば特定の組織のカスタマーに,彼らのみが使用可能なデータや機能のセットを新たな拡張パッケージとしてDhaibaWorksに加えて配布したり,またはその逆をおこなうことが容易に可能となります.実際,それぞれの拡張パッケージは一つのフォルダの中に定められた方法で収められているため,このフォルダをDhaibaWorksの特定のフォルダにコピーしたり,削除したりするだけで,パッケージを有効化・無効化することができます.パッケージには,任意のデータファイルの他,後述のメニューやパイプラインから実行可能なスクリプト,より詳細かつ高速な機能拡張を可能とするプラグインを含めることができ,これらの一部はDhaibaWorksの起動時に自動的にロードされます.

これらのパッケージを外部のユーザやデベロッパによっても開発することが可能となるように,DhaibaWorksがコア機能としてもつ大部分の機能に関しては,DhaibaWorks SDKとよばれるライブラリの中に含め,例えば彼らがプラグインを作成する際などに自由にリンクし,これらの機能をプラグインの中で利用することが可能となっています.

このように、我々が目指すシステムは多くの点で、DhaibaWorksならびにさまざまな拡張パッケージが統合されることによって実現されます。この統合されたシステムを「Dhaiba Suite(ダイバ・スイートと読みます)」と呼んでいます。